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アーキテクトニクスからホーティカルチャーへ

変わりつつあるソフトウェア開発の価値観 - 1

ソフトウェア開発は建築学のメタファで語られてきたが,「要求が変化する」現代のソフトウェア開発は,むしろ園芸的なのではないか,という話。[結]2005年8月 - www.textfile.org経由。

歴史的に見た場合、ソフトウェア開発を建築に喩えたことは決して間違いではありません。 ただし、それは「要求は変化しない」ということが保証できる場合にのみ成立するメタファなのです。 ところが、現在のソフトウェア開発において、「要求は変化する」のが当たり前になっているのです。 (中略) 「システムのアーキテクチャ」という表現や「ITアーキテクト」などという建築学に立脚する呼び名が大手を振っている現在、このホーティカルチャーというメタファの浸透具合はまだまだと言ってよいでしょう。 しかし、ソフトウェア開発者側が建築学のメタファにしがみついている限り、ソフトウェア開発の現状を変えることはできず、また、顧客に正しいソフトウェア開発のあり方を見せることもできないのではないでしょうか? まずは、自分のことをランドスケーピスト(landscapist: 造園家、庭師)と呼び、身近なところから状況を変えていきませんか?

ファシリティマネジメントやライフサイクルマネジメントなどの概念が一般化して,いまでは「建築」それ自体が「ホーティカルチャー」的なものとして認識しなおされてきているのではないかと,私は思います。さらにいえば,建築に限らず——そしてソフトウェア開発を含む——デザイン行為一般が,短期的な完成をもって終了とするものから,そのライフサイクル全体を視野にいれたものとして再構成されなくてはならなくなってきている。ソフトウェア開発や園芸だけが,変化する要求に対応しているわけではない。

だから私にはこの「建築学から園芸学へ」という議論の構図自体に違和感がある……ていうか,よおーくわかるんだけども,「建築」が保守反動勢力扱いされているのが気に食わないっつうことなのだが(笑)。

きっと本職の「ランドスケーピスト」からもコメントがあるでしょう。>land escapist

追記:

むしろ、ここで建築の比喩として挙げられている「リサーチ・デザイン・プロダクション・納品」のフローは、自動車や航空機の大量生産に似てると思う。というか、軍事技術として開発の進んだこういうプログラミングの手法が、あとで建築生産に応用されたような気がするが。

たしかに建築より航空機ってほうが近い。設計方法論の研究は,建築みたいにユルいものよりも,航空機などの機械の分野でシステマティックに精緻化されてきたのだし。

「政策」ないし「制度」のデザインプロセスってのも,育て系か。

コメント (4)

とはいえ、建方が終わってから「あ、やっぱり三階建てにして」なんていうことはほぼあり得ないですよね。やっぱり要求の変化を押さえ付ける強大な力が働いていると思いますよ。単純に。
あの「口出しできない感」はすごい。
極端なことを言えば、ソフトウェア開発では、クライアントはあらゆる変更の可能性を考えちゃうんですよね。パッと見、これは無理だろう、と思わないから。
「真の要求」の変化は建築だってなんだってあるわけですけど、それがあからさまに表に出るかでないかの違いは大きい。レベルの低い話ですけど、その底に流れている意識の違いは無視できないと思うなあ。

なるほど。そのへんが建築とそうじゃないものの境目かもしれないですね。

でも、だからって造園や園芸が変更フリーだと思われるのもやだなあ。どうしてみんな、園芸や植物やらに対してこうもロマンチックで楽観的で杜撰なんだろ。

もとえ:

棟上げ直後には言わなくても,5年もすれば,三階載せても大丈夫ですかねえ,とか言いだすけどねえ。

ロマンティックで楽観的なのは,自然の無謬性の威を借りているからですよね。人工物は「原罪」を負っちゃってますから。

naka:

益子では初めましてでした。>石川さん

楽観さは、朽ちてゆくものと伸びてゆくものの違いなんでしょうか。あと、いじれない、いじってもいい、というアフォーダンス的なものとか。何か色々話し出すとおもしろそう。

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2005年08月19日 01:47に投稿されたエントリーのページです。

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