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『関東大震災の想像力: 災害と復興の視覚文化論』

副題は「災害と復興の視覚文化論」。

大量の関東大震災のイメージは、どう意味づけられていったのか。

まさに執筆中に東日本大震災が発災し、この歴史研究が、突然強い同時代性を帯びることになった。

書かれていることのことごとく、90年の時を超えて、今日、東北におり、日本にいる我々に強く響く内容だ。図版を差し替えて、ネットについての1章を加えればそのまま『東日本大震災の想像力』になりそう。悔しいが、歴史は繰り返す。

本書の結語は次のとおり。
「かくして、この出来事が表面化させた深い社会的・文化的・歴史的意識から教訓を学ぶ機会を国民が得ることのないまま、妥協的にでき上がった本所の記念館のなかに、簡略化され削除された教科書のなかに、お決まりのこととして繰り返される防災行事の文化のなかに、関東大震災の記憶は、物言わずとどまり続けている。(p.357)」

第4章「廃虚の崇高性」や第6章「復興の視覚的レトリック」、第7章「追悼/記念」などの章は、いま、記念施設の構想に着手し、また復興についての視覚的表象を構成しようとしている我々が、あらかじめ理解しておくべき内容を多く含んでいる。どのようなレトリックを用いるにせよ、その政治性について無意識であってはならないだろう。

もう少し丁寧に読んで、来期の講義でとりあげたい。

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2014年10月13日 19:04に投稿されたエントリーのページです。

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