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パコ・アンダーヒル

を2冊続けて読む。3冊目も出たらきっと読むだろう。

パコ・アンダーヒル『なぜこの店で買ってしまうのか—ショッピングの科学 』鈴木主税訳,早川書房,2001
パコ・アンダーヒル『なぜ人はショッピングモールが大好きなのか 』鈴木主税訳,早川書房,2004

筆者は小売業のマーケティングコンサルタントである。彼らの基礎技術は,顧客行動の徹底的な観察だ。「小売りの人類学者」と呼ばれる由縁である。本書2冊は,ショッピングにおけるユーザ体験と,それをもたらすリテール環境のデザインの非常に優れた事例集になっている。

前著の第18章「店舗診断法」に,書店を例とした素人の店長にもできる観察のプロセスが8ステップにわたって書かれている。町並みと店構え,看板,ウィンドウ・ディスプレイ,カゴの置き方,放置されたカレンダー(「八月に来年のカレンダーを買う人がいるだろうか。」),告知のチラシ,会計/包装コーナー,平積みの仕方,書架の表示板,本棚の配置,低い段の本,椅子,ベストセラーや書評に取り上げられた本のリスト,等々。街路空間のレベルから店内のサイン,その空間的配置から待ち時間の処理まで,様々なスケールと時間と空間にまたがる視点から,お客さんのショッピング体験が観察され,問題点が記述され,改善が提案される。「ショッピング」という分かりやすい行為を軸として,環境情報デザインの諸問題が巻き取られているように思われた。

方法論的には,徹底的な観察の威力をあらためて感じた。調査結果を計測可能にするには,アンケートもいいのだが,その集計結果は仮説を裏付ける根拠とはなりえても,なかなか発見をすることはない。ユーザ体験の現場を虚心に観察することから発見がはじまるのだろう。

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2004年06月29日 15:07に投稿されたエントリーのページです。

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