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『機械との競争』

短いが重要な論点を提示している。

ICTの進化が非常に早いためで、雇用の調整が間に合わず、多くの仕事がコンピュータに奪われているという指摘。

テクノロジー失業という言葉はケインズの昔からあるのだが、それが加速している。

自動車運転のような複雑なパターン認識をともなう作業はコンピュータにはまだ無理と2004年にはいわれていたが、2010年にはGoogleがほぼ実用になりそうな自動運転を実現した。しかもそれは、トリッキーな方法ではなく、力技でまっこうからパターン認識をやってのけてのことだった。(20万キロ自動走行して一度だけ事故を起こした。それは信号待ちで停車中に人の運転するクルマに追突されたのだった、という話には笑った。)

コンピュータとの役割分担において、人間は何をするのか。

創造的な仕事、人をよろこばせる仕事、は「まだ」人にしかできない。

その方向を伸ばすための具体的な19の提言も含まれている。アメリカを前提としているが、アメリカですらこうした方向性へむけた行動が不十分だと認識されているとき、日本の現状はどうかと考えると、これは相当に厳しいといわざるをえない。

日本人はロボットや自動機械による対人サービスへの違和感が少ないという文化的な「優位性」があるのだから、そこを活かして、人にしかできないことをやる社会をめざすのがよいのではないか。


マシンエイジを彷彿とさせる金のかかった立派な装丁。紙が厚いので、束の割には早く読める。

追記:
オフィスとかワークプレイスの研究をするのであれば、ここらの問題も視野に入っていないといけないだろう。
長く使ってきた研究室のスローガンを書き換えなければならないかもしれない。

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2013年02月26日 08:42に投稿されたエントリーのページです。

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