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Uffizi と office と workplace

「オフィス」の語源を調べていたら,こんな記事をみつけた。

ウフィツィ美術館(Galleria degli Uffizi)は、世界及びイタリアでも最も貴重な作品が保存されている美術館の一つです。「オフィス"office"」という単語もこの「ウフィツィ"uffizi"=メディチ家の仕事場」が語源となっています。

フィレンツェの美術館・博物館

これは順番が逆だろう。

手元の英英辞書によれば, office の語源はラテン語から古フランス語経由の「仕事 opus」 +「する facere」のようである。

また,[アモーレイタリア語辞書]によれば,伊語の ufficio が 英語の office に相当するもので, uffizio (ufficioの古形)だとカトリックの「聖務日課、時課祈祷式」を意味するようだ。

だから,フィレンツェの「ウフィツィ美術館」は,「メディチ家のオフィス」だった建物を美術館にしたので,「オフィス美術館」という名前になったってことなんでしょう。

ところで,office という言葉が「事務所」という意味で一般的に使われるようになったのは,産業革命期のことであるらしい。工場が大規模化し,事務管理部門が独立した空間となっていったとき,その空間が office と呼ばれるようになった。

19世紀においても,工場は factory ではなく mill と呼ばれることが一般的であったようだ(五十嵐)。水力を動力源としていた mill が,蒸気機関を動力とするようになり,立地が自由になると同時に大規模化していく。それが factory である。そして facotry の登場と期を一にして,office が誕生した。

農業用の建物と弁別されない mill から工業に特化したビルディングタイプである factory への変化が,物品生産機能の住宅からの離脱であるのと同時に,office の登場は事務管理機能の住宅からの離脱であるといえる。

office は factory とセットの概念なのだ。

ところで,近年では「オフィスからワークプレイスへ」と言い換えることが多くなってきた。
「オフィス」は固定的な仕事場を感じさせる言葉なので,モバイル環境などもふくめてより広い意味でとらえなおした「仕事の場」を「ワークプレイス」と呼ぶのだという説明がされることが多い。

その説明だと,ワークプレイスはオフィスを包含するより大きな概念だということになるのだが,ちょっとそれは違うのではないか。

両者は重なりつつずれている。そのズレをもっとちゃんと検討しておく必要がある。place と work を吟味しなくてはいけない。

参考文献
五十嵐太郎+大川信行『ビルディングタイプの解剖学』王国社,2002

コメント (1)

koichi:

確かにその通りだと思います。
ワークプレイス、ワークスペース、オフィスとそれぞれ状況に応じて使いわけることで、本当の「働く場」についての議論をうやむやにしてきているところがあるのではないかと。
場所性の問題もありますが、もう一つは「働く」ということですね。
河原宏さんの「日本人はなんのために働いてきたのか」という本を読んだりすると、(日本人のことだけかもしれませんが)働くことの本質をちょっと立ち止まって考えてしまいます。
オフィスを論じること、結構、熱いと思います。働くことが楽しくなる環境を考えることに答えは無いけれど、でも考えることには十分が意義があるでしょうから。

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2006年11月13日 21:47に投稿されたエントリーのページです。

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