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『MIND HACKS』

を読む。

トム スタッフォード, マット ウェッブ,『Mind Hacks―実験で知る脳と心のシステム』夏目大訳,オライリージャパン,2005

脳科学の研究成果にもとづいて,脳と心と知覚の働きを解説。すべてが脳への「ハッキング」の実例によって説明されていくのがミソ。実におもしろい実験が次々と紹介されている。自分でもすぐに試せる。やってみると本当にビックリ。

たとえば,Hack #17。
鏡に顔を映して,自分の目を見てみる。映っている右目を見る。ついで左目。また右目,左目。視点が動いているのだから,目玉も動いているはずなのだが,動いている自分の目玉の姿を鏡に捉えることは決してできない。他人がこの実験をやっている様子をみると目玉がグリグリ動いているのはよく見える。我々は目を細かく動かしながら物を見ているけれども,目玉を動かしている間は物が見えていないのである。

たとえば,Hack#41。
何かに集中していると他のことには気づかない,という実験。
バスケットボールのプレイをしているビデオを見て,白いシャツのプレーヤーの間でやりとりされるパスの回数を数えてみてください。では,どうぞ。
……数え終わったら,今度はリラックスして,もういちどビデオを頭からみてみよう!

うちの子供たちは大いに驚き,最初とは違うビデオだといってきかなかった(笑)

できれば親しい人にこの本を読んでもらいながら,被験者になり続けるのが一番おもしろいかもしれない。

『行動分析学入門』にも通じることだが,こうした基礎的な知見を学びつつ,どんな風に「臨床」に応用できるかを考えるってのが,大学などで研究的にデザインを考えるひとつの典型的な方法でありうるだろう。ただ,オモシロビックリ心理実験の経験から先に進むには,この知見をデザインの実践にどう接続していくかっつうところを考えないといかんのだ。

しかし,往々にして,デザインの実践のほうが先行するわけだ。理屈はわからないが,グッときたり妙にクリアだったりするようなものができてしまう。あるいは伝統的経験的に,そのように作られてきていたりする。

その妥当性を検証するのに,こうした実験が役に立つということはある。メカニズムがわかってれば,調節もできるからね。

まあ,そんなんじゃあ「鳥肌が立つようなものはつくれない」んだけど(笑),鳥肌だけがデザインの達成じゃないんだよベイビー。

コメント (1)

オライリーのhacksシリーズの中でこれだけ異色ですよね。
本は読んでないんですけど
鏡の中の自分の黒目を見つめたまま顔の方を動かすと、相対的に目玉が動いているのが見えますよ。

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2006年02月20日 00:52に投稿されたエントリーのページです。

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