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『イームズ入門』

を読む。


イームズ・デミトリオス『イームズ入門—チャールズ&レイ・イームズのデザイン原風景 』泉川真紀監修,助川晃自訳,日本文教出版,2005

孫が書いたチャールズ&レイ・イームズの伝記。

「パッと見チャラいが実はイイ!」と中西泰人さんが誉めていたので買ったのだが,積んであった。西村佳哲さんがこの本に出てくる壁の使い方をすごく面白がっていたのが面白くて,ひさしぶりに手に取り一気に読む。

ふたりを知る人々の言葉を多く集めた労作。図版もたっぷりある。文章はやや冗長で,もっとすっきり書けるんじゃないかとも思った。

たくさんのエピソードが紹介される。

新婚のふたりはノイトラの設計したアパートに住んだ。転居するとき,ノイトラに手紙を書いた。「私たちはあなたが創造したアパートに住みながら,まるで自分の家の庭でのびのびと暮らしているように感じ,そして,住まいを育む喜びを知りました。(p.103)」彼らの「住まいを育む」という感覚は,映画「House: After Five Years of Living」を見ればよく分かる。

イームズは映画をたくさんつくったが,プロジェクトを議員団に説明するには映画を用いるが最適だという。「照明が消えて映画がはじまってしまえば,議員さんたちも席を離れたり,『失礼だが私は賛成できないね』といったりしなくなる」からだ(p.213)。この手は教授会でも使えるかもしれないねえ。

p.78のバナナの葉の話もいいな。
インドでは,下層階級の人はバナナの葉からごはんを食べる。少し上のカーストの人は皿から食べる。さらに上になっていくにつれて,ますます美しく立派な皿を使って食べるようになる。「でも,お金だけでなく経験も知恵もある人は,もう一歩先に進んで,バナナの葉からご飯を食べるのです。」

でも,読めば読むほど,ふたりが神格化されていくような印象がある。それがちょっと不満だ。チャールズは「驚くほど私的な人間(p.219)」であり,プライベートを見せるのを非常に嫌ったというから,そのせいかもしれない。


誰のものであれ,伝記はおもしろい。

これから,いろんな建築家の短い伝記を集めたような本をつくりたいと思っていて,まあ勝手に登場建築家リストをつくったりしているのだが,マイリストにある人たちがずらりとこの本に登場した。イームズ夫妻,バックミンスター・フラー,それから,トマス・ジェファーソン。マイリストがイームズの空気と繋がったように感じられて,ちょっとうれしい。エーロ・サーリネンはリストにいれてなかったが,イームズの友人として登場させることにしよう。

コメント (1)

naka:

いろんな建築家の伝記集というのは面白そうですね。神格化するための伝記というよりは、ワークスタイル集みたいな感じでしょうか?

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2005年04月29日 02:17に投稿されたエントリーのページです。

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