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環境自体の中から価値ある情報を探索しようとする機会

時空間ポエマーでは,ケータイで写真をとって送るが,その結果を見るのはパソコンか展覧会場である。これに対し,携帯で今居る場所の周辺情報をゲットしたいという希望がある。技術的にはやれるだろう。ケータイからのリクエストに応えればいいだけだから。

だが,これにはどうにも違和感がある,というか,そういうことをやりたいのではない,という気持ちがあった。

一般ユーザはケータイで情報をゲットする=ダウンロードすることにばかり関心があるようであり,提供されるサービスもそのようなものばかりである現状に対し,今日のケータイは映像も音声も文字も扱える情報《収集》機器であるのだから,アップロードすることにも使うべきではないか,という説明をよくしてきた。お仕着せのコンテンツを引き出すためでなく,コンテンツを作り出す為にケータイを使おうぜ,というわけである。

先日,柏の郊外から駅まで車で移動する機会があった。運転手も私も土地勘がない。カーナビはおろか地図もない。夜である。おおよその方向はわかっている。不安ではあったが,そのまま走り出す。もうすこし行ってから西のはず,地名がまだ北柏だから行き過ぎてはいない,夜空の明るいのが中心市街地であろう,だんだん路線商業地の間口が小さくなってきたから旧市街に近づいている,などなどの判断に従って進む。やがて,暗い道からたくさん車が出てくる道がある。これは怪しいと睨んでその道に折れる。ガラガラのバスが後ろから来る。ほどなくして,柏駅を示す行き先表示を見つけ,無事に駅に到着することができた。最短距離で行けたわけではないだろうが,深刻な遠回りでもなかったと思う。

空間に対する勘がいいと自慢したいのではない。
その間は運転手も私も不安で必死であったのだ。必死であったので,周辺環境から少しでも手がかりを見いだしたいと思い,目を凝らし,耳を澄ませていた。そのとき,環境から情報を探索しようとする感覚は我ながらとても新鮮だった。環境そのものの中に価値ある情報を探索し発見し解釈して利用する能力が人間にはあるのだ。

ある場所にいて,その場所とその周辺についての情報を得たい,と願うのは当然のことだ。

環境を不安定な状態=情報が不足している状態と考え,外部から確定的な情報を受け取ることで,その不安定さを減じたいという問題のスキームの設定の仕方がある。カーナビなんかはその最たるものだ。それはそれで有用であることはいうまでもない。だが必ずしも,地図やガイドブックにあるような情報,誰かが準備した形式情報だけが情報ではない。

そういうスキームと,時空間ポエマーで考えているのとは,環境と人間の間で情報をやりとりする際の問題の立て方が全然違う。ポエマーでは,環境にはすでに豊かに情報があるにもかかわらず,人間はそれに気づかないか無視している状態にあると前提している。ケータイのようなデバイスを持つ人間に,その情報収集機能の利用を促すイベントを契機として,「環境そのものの中に価値ある情報を探索し発見し解釈して利用する能力」を拡張する機会を提供しようというのである。

もうすこし継続して考えて整理したい。

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2003年12月14日 22:58に投稿されたエントリーのページです。

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