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2017年08月 アーカイブ

2017年08月03日

ハウスレクチャー Kivi Sotamaa & Jeffery Inaba

仙台の建築シーンにハウスレクチャーシリーズが再開されます!
復活第一回の講師は建築家の Kivi Sotamaa氏とJeffrey Inaba氏。

2017年8月8日(火) 17:30~
仙台卸町コミュニティプラザほるせ にて。
詳細は https://t.co/T4olE6wUuS

Kivi Sotamaa氏は現代フィンランドを代表する建築家のひとり。デジタル・ファブリケーションによって、繊細な形態と素材の関係を追求。建築はもちろん家具や食器などのプロダクトも興味深い。
https://www.ateljesotamaa.net

Jeffrey Inaba氏は、AMOの元代表、コロンビア大学のC-LABの創設者であり、建築とテクノロジーの新しい関係を一貫して追求してきた建築家にして編集者。論客。
http://inaba.us

夏休みの夕暮れ、七夕祭にお出かけがてら、ぜひお運びください。

 

2017年08月25日

自治体による震災メモリアル施設整備の現状—仙台市と山元町の事例から

と題して、災害研で定期的に開催されているカジュアルな研究集会、第48回IRIDeS金曜フォーラムで発表します。

http://irides.tohoku.ac.jp/event/irides-forum2017/20170825.html

  • 日時:2017年8月25日(金) 16:30~18:10
  • 会場:東北大学災害科学国際研究所棟1F 多目的ホール
  • テーマ:「東日本大震災からの復興と再生」

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事前申し込み不要で、無料ですので、お時間あればぜひ。

私が基本計画策定や展示の実装等に関わった、被災自治体の東日本大震災メモリアル施設について、コンセプトから具体的なデザインワークまでを概観します。対象は、仙台市の「せんだい3.11メモリアル交流館」「震災遺構 仙台市立荒浜小学校」、山元町の「山下地域交流センター防災情報展示コーナー」「山元町立旧中浜小学校」。いずれも地域交流施設と震災遺構とを一対と位置付け、市民の積極的・持続的な参加を志向するものとなっています。

番組詳細については上記のURLをご確認ください。私の話はともかく、石塚直樹(一般社団法人みやぎ連携復興センター代表理事)さんの「地域復興に向けた支援の『いま』〜みやぎ連携復興センターの取組から」や、島田明夫(東北大学公共政策大学院 (兼)人間・社会対応研究部門 防災法制度研究分野)先生の「東日本大震災からの復興まちづくり法制に関する研究」もお聴きいただけます。

 

2017年08月26日

災害遺構: シルエット型とディテール型

建築の災害遺構としての保存は、壊れてしまったものを壊れた状態のまま残すという、普通の建築デザインとは全く異なった思想で作られる。ここには様々なトレードオフの関係が生じてしまう。

内部を公開しようとすれば安全の確保が必須だが、安全確保のための諸策と破損状態の維持とはどうしてもトレードオフになる。落ちるかわからない天井の下を歩かせることはできないから、固定し直すか、ネットなどで新たな天井を張ることになる。めくれた床は、つまずくといけないので剥がされてしまう。そのようにして,そこで何がおきたかを静かに語っていたディテールは失われてゆく。がらんどうの躯体だけになってしまっては、何の気配も感じられない、ということになりかねない。

また長期間にわたって「壊れた状態」を維持するというのも通常ではありえないことで、特殊な表面保護をしたり、裏側で補強をしたりするなどの作業が必要になる。が、これをやりすぎると、なにか偽物めいた印象の空間にどうしてもなってしまうのである。災害による破損と経年変化による破損とを区別できることは確かに望ましい。美術作品の補修のように、のちに手が加えられたことがはっきりとわかるようにしておくことも必要だろう。時間を止めることはできない。未来永劫残しておけるのでなければ残す意味がない、というものでもない。しばらく残す、ということにも意味がある。

また、遺構は建築自体が展示品であると同時に、内部空間に様々な展示がなされることが多い。両者が補完関係にあることは当然だが、建築自体の改修デザインと内部の展示デザインとの調和がとれていなくてはならない。写真やインフォグラフィックスなどの表象展示には説明としての力はあるけれども、遺構のモノとしての価値が毀損されてしまっていたら、とてもそれを埋めることはできない。

これらのトレードオフに、適切な均衡をもたらすことが災害遺構のデザインの要諦である。そのためには前段として、そもそも遺構にどんな価値があるのかの同定を十分に議論しておく必要がある。

災害遺構の建築にはシルエット型とディテール型の二種類あると言えそうだ。

原爆ドームや女川交番のように、躯体そのものが大きな損傷を受けているものは、輪郭が変わってしまっているので、シルエットで十分にインパクトを示すことができる。躯体の健全性を保つことができれば、超長期にわたって遺構としての意義を保てるだろう。

一方、山元町の中浜小学校はディテールが重要である。RCの躯体はそのまま残っているからこそ、サッシュや間仕切りなどの二次部材、表面仕上げ,ひいては什器、備品などにスケールを超えて一貫している、損傷のディテールを見ることができなくては、何も感じ取ることができない恐れがある。

このことを踏まえずに、前述のトレードオフのバランスを吟味せずに、来場者の安全に、長期の保全に、表象の展示に重みを与えすぎてしまうと、そもそも何のためにモノとして遺構を保存し公開するのかを見失うことになる。

ディテールをして語らしめるタイプの災害遺構は、なるべくそのままに残さなくてはならない。そのためには、限界を設定しなくてはならない。

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